劇作家の清水邦夫さんがお亡くなりになりました。


2006年に上演された『タンゴ・冬の終わりに』の千穐楽のこと。

カーテンコールには演出の蜷川幸雄さんと並んで作者の清水さんも登場しました。

スタンディングオベーションと熱い拍手に包まれたカーテンコールが終わり、緞帳幕の下りた舞台の上、皆へ何か言葉を、と蜷川さんに促された清水さんは、笑顔でひと言ぽつりと、“帰ろう。” と仰いました。

その、終わってしまってさみしいような、安堵したような、なんとも言えないひと言が、終演した芝居の熱がまだ残る舞台にすっと放たれ消えていって、あの光景は忘れられません。

その抒情は、清水邦夫さんの作品から感じる繊細で哀切な美しさとおなじもののように思われるのです。



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