プレビュー公演から本公演へと舟出した『子午線の祀り』は5ステージを終え、順調に航海を続けています。

芝居中でのフォーメーションの変化や転換の流れにもようやく慣れてきました。
特に第四幕の壇之浦の合戦のシーンは、表も裏もまさに戦場のようですから。
慣れてきた分、精度をもっと高めてゆきます。

楽屋での空き時間に『子午線の祀り』初演以来五度の上演で主役を務められた嵐圭史さん著「知盛の声がきこえる」を読んでます。

嵐圭史さんが1990年の上演の時期に記した作品への取り組み方や戯曲の分析の本で、同じ戯曲に取り組んでいるいまだから特に面白く読んでいます。

この中で紹介されている作者・木下順二さんの発言で、
「せりふを口にする時、演技者自身がその調子を充分に楽しんでもらいたい。また、他の役のせりふも楽しく聞けるようになってほしい。そして(中略)最終的にはリアリティ溢れるせりふにかえってほしい」
というのを読んで、いろいろの段取りにも慣れてきた今にぴったりの言葉だと思い、それからは楽しめる調子ということも意識しつつ演るようになりました。

観たら(聴いたら)すぐわかると思いますが、野村萬斎さんはせりふの音にすごくこだわって演出されています(配役も、特に声質のバランスを重視されて決められています)。
群読を含め劇中の大半の台詞は萬斎さんご自身が稽古の時に一度読んで下さってるので、その時聞いた音を自分なりに再現して喋るようにしています。

ところでこの作品、言葉が難しい、という感想を少なからず耳にしますが、一言一句すべて理解できなくたって、べつにいいんじゃないかと思ってます。

能狂言や歌舞伎だって喋ってる内容が完全にわかってなくても楽しめるのとおなじことで。
古文調の言葉がわからない時でも音色を味わえば楽しめますよ。

というわけで、おかげさまで劇場は連日満員、お客様の反応も頗る良くて、張り切って舞台に立たせて頂いてます。
当日券も毎回発売していますので、ぜひ観てほしいです。
公演はあと2週間。23日まで続きます!