つかさん
つかこうへいさんがお亡くなりになりました。

つかさんの作品には高校時代、演劇を始めたばかりの頃に出会いました。
最初に観たのは『新・幕末純情伝』。つかさん演出ではなかったけど、そのインパクトがかなり長いこと尾を引いて離れませんでした。
大学に入って本格的に芝居をやるようになってからは次第に熱は冷めていったのですが、一時期はつか作品に夢中で、様々な著書を買い求め芝居を観に行き、うちでひとりでつか戯曲の台詞を喋っていました。
小説でも、『龍馬伝』ほど読むのが止められなかった作品はありません(とうとう完結しなかったのが残念です)。

最後に観たつか作品は何だったろう。『二代目はクリスチャン』かな。10年くらい前ですね。
亡くなられた7月10日は、たまたま、つかさんのことをネットで検索したり、芝居のビデオを見たりしていました。その偶然に少し驚きました。

僕はつか作品が描く、純粋かつ屈折した愛情や、狂気にも似た激情が大好きなのでした。
つか作品にはクライマックス前に、メインキャラクター二人が対峙し相手のことを心底思いつつもとことん傷つけ合う、というようなシーンが多く見られますが(たとえば『蒲田行進曲』の階段落ちを控えたヤスと小夏のシーンのように)、ああいう人と人とのぶつかり合いが、なんというか、ギリシャ悲劇まで遡ることが出来る、演劇の醍醐味のひとつだと思うのです。

そうして久しぶりにつか作品のことを考えていて、ハタと思ったのが、3月にやった『怒りを込めてふりかえれ』には、先述の特徴において、つか作品と近しい要素があったのだということ。
だから、あの芝居はことのほか大変だったけど、演っていて格別に楽しかったのかもしれません。

つかさんは間違いなく自分にとって演劇の面白さの一翼を教えてくれた大きな存在でした。

つかこうへいさんのご冥福をお祈りいたします。