ちょっと待った!は通用しない 〜神保良介Blog〜

役者・神保が身のまわりのことやら自分に起こったことやら考えていることなどを書き綴った、その記録。

【出演】
「第二十九回 平家物語の夕べ」
6月29日 国立能楽堂
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風邪をひいているなどして体調が悪くて、でもずっと寝てるのにもくたびれたので、何となく撮り溜めた映画でも観てようか、なんていう経験はあるだろうか。
調子が悪いのだからどんな映画を観てもそれほど楽しめはしないだろうが、僕の場合、そういう時に観てしまう映画のチョイスが悪い。
『2001年宇宙の旅』『イージー・ライダー』『未来世紀ブラジル』などを初めて観たのは、体調を崩して家で休んでいた時だった。
調子がいいときに観ても人によっては受け付けないようなものをなんでまたそんな状態で観るのか、と今ならいえるが、その時は、それが名作と呼ばれていること以外、詳しく知らなかったのである。

おかげで、それらの作品はしばらくの間、体調の悪かった時を思い起こさせる、不可解な映画として、自分の中に存在していた。
たとえば、『イージー・ライダー』は、『タンゴ・冬の終わりに』の稽古に入る前に、予習のためDVDで繰り返し観たが、高校時代に風邪で休んでいたときのことばかり思い起こさせられた。

で、いまは元気だし、稽古が始まったら時間もそんなになくなるだろうから、まだ観ていない過去の名作映画なんかをいろいろチェックしてます。
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先週、映画『バベル』を観た。感想は置いておくとして、マイケル・マローニーというイギリス人俳優がちらっと出演していたのを発見した。
役どころは、苛立ち暴力的になったブラッド・ピット演じる男に対して、落ち着けと言う観光客の一人で、しかも「あれ、ひょっとして今のマローニー?」くらいにしか出ていなかったのだが、エンドロールで名前を見つけ、やはり彼だったとわかった。
Jamesという役名がついていたから、本来はもっと出番があったのかもしれない。
マローニーは、彩の国シェイクスピア・シリーズ『リア王』でエドガーを、そして英国内でのみ上演された蜷川演出『ハムレット』ではタイトルロールを演じ、映画では『世にも憂鬱なハムレットたち』や『ハムレット』(共にケネス・ブラナー監督)などで存在感を発揮している、すごい俳優である。
英国版『ハムレット』の初日を観、終演後のパーティーにも出席させてもらっていたら、わざわざ挨拶に来てくれた。とても気さくな人だったのを覚えている。
『バベル』でも、もっと活躍が見たかったな。
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芥川比呂志エッセイ集『ハムレット役者』を読んで、50年ほど前の翻訳劇及びシェイクスピア劇の上演は、いまのそれとはかなり趣が違うことを改めて感じた。
オリジナルのものに近づけようとする意識が強かった、とでもいえばいいのだろうか。

例えば、次のようなくだりがある。
『ハムレットは黒いタイツを穿いている』
『「ハムレット」には、タイツ姿の人物が大勢出る』
やはりタイツ(しかもちゃんと黒)を穿いていたのである。それも大勢が。
もちろん知識として、かつてそういう衣裳で上演していた時代があったことはわかってはいたものの、それを実践した人の文章を読むと、何だかよりリアリティ(?)がある。
そういや、昔の翻訳劇の舞台写真を見ると、俳優の出で立ちが、ぱっと見には日本人とはわからないほど、メイクや衣裳やなんやかんやで徹底的に外国人になっている。
舞台装置も含め、いかにも外国っぽい。もちろん、それが古いモノクロ写真だからいくらか誤魔化されているんだろうけれど。

いま、シェイクスピア作品でタイツを穿き、いかにも「私は外国人なのです」みたいなヘアメイクを施して出て来たら、よほどの意図がない限りは、ふざけていると思われるんじゃないだろうか。
でも、そういった演出が主流、というか当たり前の時期が確かにあったのだし、そういう時代を経て、いまはもっといろんな格好をしても許されるようになったのだろう。
創る側も観る側も、許容度がかなり大きくなったということか。
それでもいまだに、自分のことをたとえばジョンとかハロルドとか名乗り、相手をステファニーとかクリスティーナとか呼ぶには、それなりのコツというか、乗り越えなければならない何かがつきまとうし、それを観劇する側にも同じことがいえると思うのだが。
そこが厄介でもあり面白いところでもある。

もちろん、このエッセイ集はそんなことだけが面白かったわけではなく、芥川氏の、演劇にかける情熱と知識欲の強さ、そして、世界レベルの演劇への憧れと、おそらくは自分もいつかそこへ行くんだという野心を抱きながら何度も海外へ赴き、芝居を観、様々な人と出会っていたことは、大きな刺激になりました。
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